2009年1月13日火曜日

真空管アンプ

真空管アンプが最近かなり復権している。一時絶滅危惧種であったのに大したものだ。

~1970年代
Audioアンプの自作というと真空管が幅を利かせていた。
私が初めて作ったパワーアンプが6CA10というNECの三極出力管のシングルアンプだった。 プリアンプは今は無きクリスキットが出していたマッキントッシュC22をCopyしたもの。
この時私は学生だったので金が無く6CA10のアンプを作っては壊し色々な回路に作り変えたものだ。
また友人に頼まれて何台かアンプを作った。その頃は作ることが大好なのにお金がないから自分のアンプは作れず友人のものを作るのが嬉しくて喜んで作ったものだ。

1980年代
日米で真空管の製造が終了したこともあり真空管自体の入手が非常に困難になった。特に日本オリジナルの6CA10/50CA10、6GA4.6RA8、6GB8などは海外のメーカで作っていないので製造中止になると価格は跳ね上がり数年でマーケットから消えてしまった。
海外の真空管もあまり雑誌の広告で見なくなり真空管は一時絶滅したかに思えた。

真空管アンプはその時代も「無線と実験」、「ラジオ技術」などの雑誌では粘り強く製作記事が発表されていた。 そういう意味では真空管が今あるのではこれらの雑誌のおかげでもある。

私は若気の至りでその頃は半導体アンプの製作に転向したので真空管がどうなるか気にもとめていなかった。Audioではほぼ絶滅した真空管がギターアンプでは需要があり6L6やEL34などの真空管がロシアなどで作られているという噂を聞いた程度である。

1990年代
この頃は中国、ロシア、チェコなどで真空管の生産が本格化し日本にも輸入されてきた。
サウンドパーツという店が地元にあることを知り行ってみた。
http://www7.ocn.ne.jp/~soundprt/
20年近く前に友人のために作った真空管アンプの修理のための部品を買うのが目的であった。
ほとんど無償(一杯飲ませてもらったが)で作った10年以上前のアンプではあるが自分で作ったからには修理依頼が来たら修理せねばなるまい。
そんな理由でサウンドパーツに行った。最初は真空管アンプには全く興味が無かったがだんだんと作ってみてもいいかなと思ってきた。

そこで20年ぶりに真空管アンプを作った。回路はサウンドパーツの完全プッシュプルタイプを少々自分でアレンジした6L6 ppである。この回路はオートトランスを使い初段で位相反転し全段ppなので回路が非常に綺麗だし理になかっている。またあまり高い球を使うのはいやでありふれた球で良い音をだしたかった。
音はそれまで使っていた半導体の自作アンプとかなり近い。入れ替えても大きな違いがない。使っているスピーカーの性格にもよるが良いアンプは方式が違っても出てくる音はそれほど違わないと思う。

その後サウンパーツから真空管プリアンプを購入して楽しんでいた。

2000年代
東京に単身赴任してiPODとBoseのパワーアンプとLinn Tukanで音楽を聴いていたが、もうちょっと音を良くしたいと思いサンオーディオの2A3シングルアンプのキットを購入して組み立てた。私が学生時代は2A3は幻の高級真空管だった。300Bなんてプロ用だから存在も知らなかった。2A3のアンプを所有できてうれしかった。
http://www2.big.or.jp/~sunaudio/

今英国に居てアンプの組み立てなど考えられない。部品の入手はままならないし、あまり荷物を増やしたくないからだ。 またこちらには日本のようなアンプDIYの雑誌はない。でもマニアは居て色々と楽しんでいるようだ。英国のマニアは日本のように恵まれていないのでこちらのマニアは本当に筋金入りなのだと思う。

産業的に考えて何故今真空管の製造が行われているか良くわからない。私なりに考えてみた。
日米西欧は既に真空管の製造を終了した。(Westernが300Bの製造をしているのは例外中の例外)とっくの昔に半導体に移行した。企業としてビジネス規模が少なくやる価値が無いと判断したからだ。
その頃中国、ロシアなどは経済のグローバル化にさらされる前で真空管の製造を開始・継続できた。当時これらの国は今より労働コストが安くまた西側の使用済の製造装置を安く導入できたので需要が少なくても十分な利益が得られたのだろう。これらの国では他の産業も発展途上なので真空管製造が選択と集中により切り捨てられることもなかった。
その後、世界の真空管の需要が増加したのでこれらの国で真空管製造業がビジネスとして成り立っている。
つまり経済のグローバル化、真空管と半導体のクロスオーバー、社会主義の崩壊そして真空管の需要増加が実に絶妙なタイミングで起こり真空管が生き延びていると考えられる。
要因の何かが崩れると真空管製造は難しくなり需給バランスが大きく変わるのだろう。

日本に帰ったら一台パワーアンプを作ってみたい。
作る場合には以下のようなものかな?

通常の真空管アンプの問題は
(1)電源のデカップリングに高抵抗が入っていて真空管に流れる電流により電圧変動が発生する
(2)プレートとグランド間の電圧を次段に伝送するがこれは信号電圧と電源電圧変動が合成された信号であり誤差(歪)を含んでいる
(3)かっこいいと思うデザインのアンプが少ない

そこで以下のような構成とする
(1)基本的には-サンドパーツの回路を踏襲して全段pp 全段ppはA級で動作させれば電源電流の変動が少ないの電源電圧の安定化にメリットがある。でもオートトランスによる位相反転にするかOpampを使った位相反転にするかは決めていない。オートトランスによる反転は芸が無いのでOpampを使い高精度な反転回路を組むのも面白いと思う。試作機で音を聞いて決める。
(2)問題点1の対策として
-電源に定電圧電源を使い電源電圧自体の変動を極力減らす。電源はNon-NFBタイプ
-カソードに定電流源を入れ差動とする これにより原理的に電流が変動しないので電圧変動も起きない。 ちなみにサウンドパーツではプレートにチョークを入れて定電流化している。半導体による定電流がいいか、プレートチョークがいいかは聞き比べてみたい。
(3)問題点2の対策として
-真空管のプレート電圧を次段に伝送するのではなくプレート電流を次段に伝送する。そのために半導体のカレントミラーを使ったV/I変換回路で次段に信号を伝送する。高電圧なのでどのトランジスタを選択するかが音質に大きな影響を与えると思う。
(4)かっこ良く作る
あこがれのアンプは往年のギャラリーQの300Bシングルアンプ。このような佇まいのアンプにしたい。 LuxのOY型トランスが入手できればいいのだが、、、

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