2009年5月6日水曜日

農協の大罪 読了

以前レビューを見て気になっていた本。
日本に出張した時にこの本を買ってきた。やっと読んだ。

http://tkj.jp/book?cd=01672001

農協は組織の利益を最大化するために米価を吊り上げるための減反をすることを強く要求した。
米価を高くすると米の販売手数料が増えるし、稲作をするための肥料や農薬を農家に高く売ることができるからだ。

自らが強い政治圧力団体であるために組合員数を維持する必要があり圧倒的に多い兼業農家にメリットのある政策(米価維持=減反)を要求し続けた。そのため専業農家が兼業農家の土地を吸収し規模拡大でコスト競争力をあげる政策は実現しなかった。
兼業農家が農業をやめ農地を転用して売却して得た資金を農林中金で運用して利益を得てきたからむしろ兼業農家が農地を転用することを応援していたのかもしれない。

自民党の農政族は農協が抱える組織票の獲得と交換条件で農協の要求を政策に取り入れた。そうでないと国会議員で居られないから農協(=兼業農家)が喜ぶ政策を立法化してきた。

農水省は予算の獲得と組織の存続のためには農政族の要求に応えるしかなかった。 農業が衰退することは判っていながら農水省の存続のために農協や農政族の代理人としての仕事をして来た。

このようなもたれ合いの構造により減反政策が行なわれ農地が減少し日本の農業は衰退の一途を歩んでいる。

私も兼業農家の労働力の一人として(かみさんの実家が兼業農家でありそれを手伝っていた)この事実にどう対峙したらいいのか?兼業農家それぞれは日本の農業をつぶそうとして農業をして来たわけではない。私などは農地の維持が日本の国土保全のために必要だと考えてそのために農業をやって来た。しかし農協-自民党-農林省という組織のエコシステムにより農業が破壊される構造のコマの一つとして動いて来たことを考えると空しい。私や一般の兼業農家がどう立ち回ればよかったのか?考えてみても答えはない。置かれた状況の中で取りうる唯一の選択肢を取って来ただけであった。
もっと物事の本質を見極めて、国・農協などに対して声を発するべきであったとは思う。

農協、自民党、農水省の担当者も実際に組織に所属して働いていると正論を言ってばかりいられない。20-30年後の日本の姿より今年度の利益、今度の選挙の当選、来年度の予算のほうが大事と考える。なにも日本の農業を滅ぼそうとしていたのでは無いと思う。組織の存続・繁栄がミッションであれば誰がやっても同じような結果になっていたと思う。人間や組織の特質を考えずにこのような組織を作ってしまったことが問題であった。

そしてこの馴れ合い体制ができた背景には国のビジョンを描かずに場当たり的に法律を決め執行してきた立法府と行政府の問題がある。

この本にある今後の方向性は正しいと思う。しかしそれを現実化する志の高い政治家が居ないのは残念だ。

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